瑞々しく 和になって

今回の公演『語りと笛とうつわの会』では、
これまでにも何度も陶芸で企画展をしてきた宮沢賢治を媒体として
すでに「展示」ではなく「公演」と呼ぶ時点で、
私の展示のあり方の過渡期を渡り切りたいという思いが
個人的にはあったように客観視しています。
 

公演当日は雨で
私の特に大切な展示はいつも雨と親和性が非常に高いことを
よくご存じの常連のお客さまがたは
きっと『やっぱりね。』と思われたことでしょう。
笛の中村香奈子さんも、
お湿りで笛の鳴りがとてもよくて嬉しい、と仰っていて
やはりこの雨は瑞兆でした。

 
また、公演のなかでも語りの菊地彩さんが
『今日が雨で本当によかったと思います。』と、
肚にずしっと来るお声で
何度も仰っていたのが印象的でした。
 
庭の緑の瑞々しさがあまりに美しく
水の粒子をキラキラと感じて
嬉しくて息がつまりそうでした。


そしてこのお天気と、私の新しい作品たちの気配や会場の雰囲気にあわせて
彩さんが当日その場で読まれる賢治さんの作品を追加変更。
 
追加変更されたことで今回ふたたび、あの、
岩手の風を感じる彩さんのすばらしい
『雨ニモマケズ』を聞かせていただく事が出来たのでした。
彩さんの心の奥から醸し出される岩手なまりの語りは、
この詩に印象付けられてきた・・これまでの何か、
既成概念のようなものが外されて・・
これがほんとうであったのか、と思わせるような、
もっと純朴に、土に、風に、自然に、近いものに感じるのです。
 
彩さんのプログラム構成が、
もともととても素晴らしかったのですが
当日会場に入って
その場の大地と馴染まれたら、
『これも・これも、読みたくなって』と
さらにさらにすばらしいプログラム編成と成ったのでした。
魂の声のままに軽やかです。
  
-当日のプログラムより-
♪プロローグ 土の楽器の合奏
・お話「おきなぐさ」
・詩 林と思想
・うた かはばた
♪笛
・詩 くらかけの雪
・うた 種山ヶ原(とおきやま)
・香奈子さんの笛のお話
・雨ニモマケズ
「けん十公園林」
♪笛 
「四又の百合」短編
♪エピローグ 笛と土の楽器の合奏
etc…
 

彩さん リハーサルにて。

 
今回、絶妙なタイミングで窯出しが間に合った
自分のために作った大きなサイズの土のシンギングボウルは
驚くような(と、皆さま仰いましたが、私もです。)
大地と宇宙の響きを持っていました。
当日初めてその音色を香奈子さんと彩さんにお聞かせしたら
サッと香奈子さんの直感的なご判断で
その場でプログラムに入り、
会場にお越しの皆様には
まさかあれが当日初めて合わせた私たち三人の合奏だったとは
思われなかったかもしれません。
私にしてみれば、魂の声が時空を超えてしまった、感覚です。
 
目を輝かせながら香奈子さんが
『まほさん、普通じゃないね。』
『まほさん・・作品がやばいね。』
と言って下さったこと、
最高の誉め言葉です。
 
大地がお分けくださった土たちのお力、
そして優れた直感と柔軟なお心の
彩さんと香奈子さんに本当に感謝しています。
 

 
今回何より嬉しかったのは、
お客さま同士が和気あいあいとされていたことです。
 
今回お一人でお越しの方が多かったのですが、
ひとつの賢治さんの宇宙船に乗った私たちみんなが、
うたや語りや笛と土に共鳴し合い、
その共鳴のままに盛り上がって
和気あいあいとした空気が会場に満ちていたこと。
途中休憩がもうおしゃべりで永遠に続くのではないかと思うほどです。
 
終演後にお茶と歓談のお時間を設けておりましたので
最後はなんだか本当に皆さんご歓談が止まらないご様子で、
それも初めて今日この場で出会ったばかりの方々が
繋がられて行く様子を感じられたこと、
私は本当にこういうことがしたかったんだなあ!と嬉しく思いました。
 
表現者と観覧者といった限られた方向のベクトルではなく
輪に・和になって広がる感覚です。
それが今回の会で叶ったように感じたことは、
本当にありがたく嬉しく思いました。
賢治さんの船に私たちと一緒に乗ろうとお越しの皆様の共鳴力、
香奈子さん、彩さんの温かい包み込むようなお人柄を、
とても大切に思いました。
 

 
この会に合わせて動いて一緒の船に乗船してくださった
すべてに、
すべての皆さま、
本当にありがとうございました。
 
今回お越しになれなかった方々からも複数、
とても丁寧なお心のあるメールやお手紙をいただきました。
お気持ちがほんとうに嬉しく、ありがとうございました。
 
この会はこのあとツアーを組んでゆうるり各地を巡る予定です。
この巡りの響き合いにタイミング合います時にはぜひお越しくださいね。
次回どこかでお会いできますこと
こころから楽しみにしています***
 
それから今回制作した作品の一部を
近日ネットショップの方に掲載させていただきます。
掲載いたしましたのち改めてお知らせさせてもらいますね。
ネットショップで作品をご覧いただく形態を
今後もっと活用してゆきたいと思っています。
ご縁ありますようでしたら嬉しく思います*